今回の記事は、父が執筆を担当させていただきます。私は現役の外科医として日々患者さんと向き合いながら、先天性内反足を持って生まれた子供を育てる親でもあります。
先天性内反足は私の専門領域ではないため、今回の記事は知り合いの整形外科医に監修していただきました。この病気は適切な治療を行えば、お子さんは将来、自分自身の足でしっかりと歩んでいくことができます。同じように病気を持つお子さんを授かったご家族に向けて、少しでも皆さんの不安を和らげ、治療への理解を深めていただけるよう情報を整理しました。
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疫学(病気の傾向と合併症について)
先天性内反足は、日本では約1,000名から2,000名に1人の割合で発生します。男女比は2:1で男児に多く、片足だけの場合と両足ともにある場合はほぼ1:1の割合です。 多くは「特発性」といって基礎疾患のないものですが、約20%のケースでは、染色体異常や心血管系、筋骨格系など他の先天異常を合併していることがあります。そのため、整形外科だけでなく、小児科医による全身のスクリーニングも重要となります。
娘の場合は先天性内反足以外にも先天性十二指腸閉鎖や心奇形などが合併していました。
発見の契機(病気に気づくきっかけ)
この病気は、出生時に足が内側に強く向き、足の裏が天井を向くような非常に特徴的な形をしています。そのため、医療従事者でなくても出生直後に一目で認識できることがほとんどです。 十二指腸閉鎖症のように「羊水過多」などの明確なサインが妊婦健診で出ることは稀ですが、近年の超音波検査の普及により、出生前に指摘されるケースも増えています。
娘の場合は先天性十二指腸閉鎖のサインである羊水過多を妊婦健診で指摘されたことをきっかけに精密な全身エコーを出生前に受けました。そのエコー検査で足が内側を向いていますね、と指摘されていました。実際に生まれてきた姿を見ると、両側の足が内側を向いたゴルフクラブのような形をしており、指摘されていた通り先天性内反足なのだな、と一目でわかりました。

診断法(出生後の確定診断)
出生後、整形外科医によって詳しく観察されます。診断のポイントは、以下の4つの変形が組み合わさっていることです:
- 尖足(せんそく):足首が下に垂れ下がっている。
- 凹足(おうそく):土踏まずが極端に高い(甲高)。
- 内転(ないてん):足の先が内側に曲がっている。
- 内反(ないはん):かかとが内側に傾いている。
レントゲン検査も行われますが、乳児の足の骨はまだ軟骨が多く、画像から得られる情報は限られているため、主に医師の手による診察が重要視されます。
治療法(整形外科医の視点から)
現在、世界中で「ゴールドスタンダード」とされているのがPonseti(ポンセティ)法です。これは、手術を最小限に抑え、赤ちゃんの持つ柔軟性を活かして治していく方法で、以下の3本柱で行われます:
- ギプス矯正:週に1回、手で優しく足をマッサージ(徒手矯正)し、ギプスを巻き替えて少しずつ形を整えます(通常5〜7回)。
- アキレス腱皮下切腱:ギプスだけで治りきらない尖足変形に対して、アキレス腱を数ミリの小さな傷で切る処置です。約9割の赤ちゃんが必要となります。
- 装具療法:形が戻らないよう、バーの付いた「外転装具」を装着します。
娘も1-2週間おきに複数回のギプス矯正を行なったのち、アキレス腱切腱の手術を受けました。






術後の経過(矯正終了からその後の成長まで)
ギプス治療が終わった後、最も重要なのが装具(デニスブラウン装具など)の装着です。
- 最初の3ヶ月:お風呂以外、23時間装着します。
- その後4歳ごろまで:お昼寝と夜間のみ装着します。 この装具を指示通りに使い続けることが、再発を防ぐ最大のポイントです。お子さんが歩き始めれば、日常生活は普通の靴で過ごすことができます。

予後(親御さんが一番知りたいこと)
「この子は将来、普通に歩けるようになりますか?」という問いに対し、整形外科医は自信を持って「適切な治療を行えば、普通に歩けるようになります」とお答えします。 Ponseti法の普及により、以前のように大規模な手術が必要なケースは激減しました。適切な時期(理想は生後1〜2週間以内)に治療を開始すれば、日常生活に支障のない、柔軟で力強い足を獲得できる可能性が極めて高いのです。
お子さんの足を見て、自分を責めたり不安になったりされるかもしれません。しかし、この病気は「治る病気」です。一歩ずつ、一緒に治療を進めていきましょう
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【参考文献】
- 薩摩眞一. (2017). 特集 小児整形外科-新たな治療法の導入一 先天性内反足に対するPonseti法の治療体系. 関節外科, Vol.36(No.6), 43-45.
- 衣笠真紀, 薩摩眞一, 小林大介. (2013). Ⅲ 手術的治療の進歩 4.先天性内反足の初期治療と遺残変形への対処 先天性内反足に対するPonseti法. 別冊整形外科, 64, 146-149.
- 大関覚, 津澤佳代. (2022). V.骨・運動器疾患—8 先天性内反足. 小児内科, vol.54(増刊号), 612-617.


