第4回:見えない恐怖と、涙のキャンセル。〜家族の愛に包まれて〜

治療日記

出産の日が近づくにつれ、私たちの生活は「娘を迎えるための具体的な準備」へとシフトしていきました。それは不安を希望で上書きしていくような、大切な時間でした。

常に隣り合わせだった「臍帯潰瘍」への恐怖

この時期、私の心を一番苦しめていたのは、常に頭の片隅にあった「臍帯潰瘍(さいたいかいよう)」のリスクでした。 十二指腸閉鎖があることで、逆流した胃酸がへその緒を傷つけてしまうかもしれない。もしそうなれば、お腹の中で突然……。

そんな目に見えない、防ぎようのない恐怖と戦う毎日は、生きた心地がしませんでした。胎動が少しでも静かだと不安でたまらなくなる。 「今日まで生きていてくれて、ありがとう」 毎晩、お腹をさすりながらそう祈るのが精一杯でした。

夫婦で選んだ、新しい「相棒」

これから始まる通院生活を見据えて、私たちは車の購入を決めました。 主に運転する私としての「スライドドアの利便性」と、夫のこだわりである「荷物がたくさん積める格好良さ」。

お互いの思いを話し合い、最終的には夫が選んだ力強い車に決めました。新しい車にチャイルドシートを乗せて娘と走る日を想像することは、未来への漠然とした不安を「具体的な希望」に変えてくれる、私たち夫婦にとって大切な作業でした。

夢見ていた「ニューボーンフォト」のキャンセル

一方で、病気がわかるずっと前から、私が心躍らせて予約していたものがありました。それは、ニューボーンフォトの撮影です。

「自分の子供が生まれたら、絶対に可愛く残してあげたい」 そんな憧れを抱きながら予約をしたあの時は、幸せなマタニティライフの絶頂にいました。しかし、娘の病気がわかり、産後すぐの手術と長期入院が避けられない状況になったことで、その夢は泣く泣く諦めることになりました。

「いつ退院できるか分からない」「生後数週間のうちに撮ることは、この子には難しい」。 憧れていた「生後間もない姿」を諦め、キャンセルを伝えたときの胸が締め付けられるような切なさは、今でも忘れられません。

切なさが混じるベビーグッズ選び

買い物に出かけるたびに、胸がチクりと痛む瞬間もありました。 本来ならウキウキして揃えるはずのベビーグッズ。でも、私の場合は「いつ退院できるかわからない」「どんな状態で生活が始まるかわからない」という不安から、必要最低限のものしか手に取ることができませんでした。

お店で可愛いベビーグッズを見るたび、楽しみな反面、「どうして私は普通に買い物を楽しめないんだろう」と周囲の幸せそうな妊婦さんと自分を比べては、やり場のない悲しさを感じることもありました。

支えてくれた、家族という大きな愛

そんな折れそうな私の心を支え、立ち上がらせてくれたのは、家族の存在でした。

里帰りをしてから、母は通院のたびに送り迎えをしてくれ、父も私が不安を吐き出すとき、ただ黙って優しく寄り添ってくれました。義理の両親も、検診のたびに「体調大丈夫?信じて待とう」と温かい言葉で何度も励ましてくれました。

羊水過多で、通常の週数よりもずっと大きく、重かった私のお腹。夜も苦しくて眠れないときは、ハグモッチ(抱き枕)に身体を預けて耐えましたが、それ以上に私の心を軽くしてくれたのは、家族が注いでくれた「独りじゃないよ」という無言の安心感でした。

準備は整った。

車の購入、刺繍の完成、名前の決定。そして、家族全員の覚悟。 思い通りにいかないこともあったけれど、私たちは精一杯の「最高の準備」を終えました。

「さあ、いつ生まれてきても大丈夫だよ。みんながあなたの味方だからね」 お腹の娘にそう語りかけながら、私はいよいよ運命の出産当日を迎えます。

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